行政書士 憲法 応用編(1〜2問)|経済的自由・人身の自由

問1:職業選択の自由の規制に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  • A:薬事法距離制限事件判決は、薬局の適正配置規制について、その立法目的は不良医薬品の供給防止等の消極的・警察的目的であり、この目的はより緩やかな規制手段によっても達成できるとして、憲法22条1項に違反するとした。
  • B:小売市場距離制限事件判決は、小売市場の許可制について、国民の生命および健康に対する危険の防止という消極的・警察的目的の規制と位置づけ、厳格な合理性の基準によって審査した。
  • C:薬事法距離制限事件判決は、明白性の原則を適用して規制を合憲とした。
  • D:酒類販売業免許制について判例は、致酔飲料の販売に伴う弊害防止という消極目的の規制として厳格な合理性の基準により審査した結果、規制手段が過度であるとして違憲と判断した。
  • E:公衆浴場の距離制限について判例は、一貫して違憲との判断を示してきた。
【第1問:正解と解説】

正解:A

・A
【論点】
規制目的二分論と薬事法距離制限事件(最大判昭50.4.30)

【考え方】
消極目的規制については、立法目的を達成しうるより緩やかな規制手段の有無を審査する厳格な合理性の基準が適用される。薬局の適正配置規制は、行政上の監視・取締りの強化等のより緩やかな手段で目的を達成できるため、必要かつ合理的な規制とはいえないとされた。

【選択肢解説】
本肢は目的の認定・審査手法・結論のいずれも正確であり、妥当である。

・B
【選択肢解説】
妥当でない。小売市場事件は、経済的基盤の弱い小売商の保護という社会経済政策上の積極目的の規制と位置づけた。

・C
【選択肢解説】
妥当でない。明白性の原則が適用されたのは積極目的規制の小売市場事件である。薬事法事件では厳格な合理性の基準により違憲とされた。

・D
【選択肢解説】
妥当でない。酒類販売業免許制は租税の適正・確実な賦課徴収という財政目的の規制とされ、立法府の判断が著しく不合理でない限り合憲とする緩やかな枠組みで合憲とされた(最判平4.12.15)。

・E
【選択肢解説】
妥当でない。公衆浴場の距離制限について判例は時期により理由づけを変えつつ、一貫して合憲の判断を維持している。

関連過去問:H26,問4


問2:財産権の保障と損失補償に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  • A:森林法共有林分割制限事件判決は、共有森林の分割請求権を制限する規定を、立法目的との関係で合理性と必要性を欠くとして憲法29条2項に違反するとした。
  • B:奈良県ため池条例事件判決は、災害を防止するためにため池の堤とうの使用行為を条例で禁止することは、財産権を有する者が当然受忍しなければならない責務というべきものであるとした。
  • C:農地改革事件判決は、憲法29条3項の「正当な補償」とは、その当時の経済状態において成立することを考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいい、常にこの価格と完全に一致することを要するものではないとした。
  • D:河川附近地制限令事件判決は、財産権を制限する法令に損失補償に関する規定がない場合であっても、直接憲法29条3項を根拠にして補償請求をする余地が全くないわけではないとした。
  • E:土地収用における補償について判例は、収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくさせるような補償は不要であり、市場価格の半額を基準とすれば足りるとしている。
【第2問:正解と解説】

正解:E

・A
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。財産権に関する数少ない法令違憲判決である。

・B
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。奈良県ため池条例事件判決は、ため池の破損・決壊の原因となる堤とうの使用行為は、憲法および民法が保障する適法な財産権の行使の範囲外にあるとした。また、災害を未然に防止するという社会生活上やむを得ない必要から、堤とうを使用する財産上の権利を有する者は、その使用制限を受忍すべき責務を負うとした。

・C
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。相当補償説を採った農地改革事件の判旨である。

・D
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。29条3項に基づく直接請求の可能性を認め、補償規定を欠く法令を直ちに違憲無効としない構成である。

・E
【論点】
土地収用における補償の程度

【考え方】
土地収用法に関する判例(最判昭48.10.18)は、収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくさせるような完全な補償を要するとしている。「市場価格の半額」などという基準を示した判例は存在しない。

【選択肢解説】
本肢は判例と正反対の内容であり妥当でない。よって本問の正解である。農地改革(相当補償)と土地収用(完全補償)の使い分けを正確に。

関連過去問:H29,問4


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