問5:売買に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- A:売買の目的物である特定した物が、その引渡し後に当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失した場合、買主は代金の支払を拒むことができない。
- B:買主が売主に手付を交付した場合において、買主自身が既に履行に着手していたときは、売主が履行に着手していなくても、買主は手付を放棄して契約を解除することができない。
- C:他人の権利を目的とする売買契約は、無効である。
- D:売買契約に関する費用は、別段の定めがない限り、買主が負担する。
- E:買主が売主に解約手付を交付した場合、売主が契約の解除をするには、買主に対して倍額を償還する旨を口頭で告げれば足りる。
【第5問:正解と解説】
正解:A
・A
【論点】目的物の滅失等に関する危険の移転(567条1項)
【考え方】
売主が買主に目的物(特定したものに限る)を引き渡した場合、引渡し以後に当事者双方の責めに帰することができない事由により滅失・損傷したときは、買主は担保責任の追及や解除ができず、代金の支払を拒むこともできない。「引渡し」により危険が買主に移転するという原則を定めたものである。
【選択肢解説】
本肢は妥当である。
・B
【選択肢解説】
妥当でない。手付解除ができなくなるのは「相手方」が履行に着手した後である(557条1項ただし書)。自ら着手していても、相手方が未着手であれば解除できる(判例法理の明文化)。
・C
【選択肢解説】
妥当でない。他人物売買も有効であり、売主は権利を取得して買主に移転する義務を負う(561条)。
・D
【選択肢解説】
妥当でない。売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する(558条)。
・E
【選択肢解説】
妥当でない。売主からの手付解除には倍額の「現実の提供」が必要である(557条1項・改正で明文化)。口頭の提供では足りない。
関連過去問:R5,問32
問6:贈与、消費貸借および使用貸借に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、妥当でないものはどれか。
- A:書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができるが、履行の終わった部分については、この限りでない。
- B:書面でする消費貸借は、金銭その他の物の授受がなくても、当事者の合意のみによって成立する。
- C:書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。
- D:使用貸借は、借主の死亡によって終了する。
- E:使用貸借の貸主は、書面による使用貸借であっても、借用物の受取り前であれば、いつでも契約の解除をすることができる。
【第6問:正解と解説】
正解:E
・A
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。550条のとおり。不動産の贈与では引渡し又は移転登記のいずれかがあれば「履行の終わった」ものとされる(判例)。
・B
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。書面でする(諾成的)消費貸借(587条の2第1項・2020年改正で新設)である。
・C
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。587条の2第2項のとおり(貸主に損害があれば賠償請求可)。
・D
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。597条3項のとおり。使用貸借は借主本人への無償の恩恵であり、相続されない。
・E
【論点】借用物受取り前の貸主の解除権(593条の2)
【考え方】
使用貸借の諾成化に伴い、貸主は、借主が借用物を受け取るまで、原則として契約を解除できる。ただし、書面による使用貸借については、借用物受取り前であることのみを理由とする民法593条の2の解除権は認められない。これは、合意解除や債務不履行等を理由とする一般的な解除まで一切否定する趣旨ではない。
【選択肢解説】
本肢は、書面による使用貸借であっても、借用物の受取り前であれば貸主がいつでも民法593条の2による解除をできるとしており、妥当でない。よって本問の正解である。
関連過去問:H30,問32
