行政書士 民法 応用編(7問)|債権各論(契約)

問7:賃借権の譲渡および賃借物の転貸に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  • A:賃借人が賃貸人の承諾を得ずに第三者に賃借物の使用または収益をさせたときは、賃貸人は、常に賃貸借契約を解除することができる。
  • B:賃借人が賃貸人の承諾を得ずに賃借権を譲渡した場合において、その譲渡が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、譲渡自体が無効となるため、譲受人は賃借権を取得しない。
  • C:無断譲渡・無断転貸を理由とする解除の効力を争う場合において、背信的行為と認めるに足りない特段の事情の存在は、解除の効力を主張する賃貸人が主張・立証しなければならない。
  • D:賃借物が適法に転貸されたときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。
  • E:賃貸人の承諾を得て賃借物が転貸された場合において、賃貸人と賃借人が賃貸借契約を合意により解除したときは、賃貸人は、原則としてその解除を転借人に対抗することができる。
【第7問:正解と解説】

正解:D

・A
【選択肢解説】
妥当でない。612条2項は無断譲渡・転貸を解除事由とするが、判例(最判昭28.9.25)は、賃借人の行為が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には、解除権は発生しないとする。「常に」解除できるわけではない。

・B
【選択肢解説】
妥当でない。特段の事情がある場合に否定されるのは賃貸人の解除権であり、賃借権の譲渡・転貸自体は当事者間では有効である。譲渡が無効となるのではなく、解除ができなくなる結果として譲受人・転借人の使用収益が賃貸人との関係でも保護される。

・C
【選択肢解説】
妥当でない。判例(最判昭41.1.27)は、背信的行為と認めるに足りない特段の事情の主張・立証責任は、解除の効力を争う賃借人の側にあるとする。解除を主張する賃貸人は612条の要件(無断譲渡・転貸の事実)を立証すれば足りる。

・D
【論点】適法な転貸借における転借人の直接履行義務(613条1項)

【考え方】
適法な転貸借がされると、賃貸人保護のため、転借人は賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。その範囲は「賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲」が限度となるため、賃料額は原賃貸借の賃料と転貸借の賃料のうち低い方が上限となる。

【選択肢解説】
本肢は613条1項のとおりであり、妥当である。前払賃料をもって賃貸人に対抗できない点(同項後段)もあわせて押さえたい。

【記述式連結】この論点は記述式モジュール(07_02_04)問6「無断転貸と背信行為理論」で40字記述として再出する。択一で判別できた知識を、条文の要件・判例の規範として自分の言葉で書き出せるかまで仕上げること。(あわせて問2「転貸借と債務不履行解除」も参照)

・E
【選択肢解説】
妥当でない。613条3項本文により、適法な転貸借がされた場合、賃貸人は賃借人との合意解除を転借人に対抗することができない。ただし、解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときはこの限りでない(同項ただし書、最判平9.2.25参照)。

関連過去問:H20,問45(記述)/H21,問33


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