問3:抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- A:抵当権者は、抵当不動産の賃借人が供託した賃料の還付請求権については、物上代位権を行使することができない。
- B:抵当不動産の被担保債権について不履行があったときは、抵当権の効力はその後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。
- C:抵当権設定登記後に締結された建物賃貸借の賃借人は、競売により建物が買い受けられた場合、直ちに建物を明け渡さなければならない。
- D:抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をすることができず、代価弁済によってのみ抵当権を消滅させることができる。
- E:抵当権は、被担保債権と分離して、単独で譲渡することができる。
【第3問:正解と解説】
正解:B
・A
【選択肢解説】
妥当でない。判例は、賃料債権が供託された場合の供託金還付請求権に対しても物上代位権を行使できるとする(最判平1.10.27)。賃料の変形物だからである。
・B
【論点】抵当権の効力と果実(371条)
【考え方】
抵当権は非占有担保であり、設定者の使用収益を妨げないのが原則だが、被担保債権の不履行後は果実(天然果実・法定果実)に効力が及ぶ。賃料への物上代位と平仄を合わせた2003年改正の規定である。
【選択肢解説】
本肢は371条のとおりであり、妥当である。
・C
【選択肢解説】
妥当でない。抵当権者に対抗することができない賃貸借により、競売手続の開始前から抵当権の目的である建物を使用又は収益している者等には、原則として買受けの時から6か月間の明渡猶予が認められる(395条1項)。したがって、常に「直ちに」明け渡さなければならないわけではない。ただし、買受人が相当の期間を定めて買受け後の使用対価の1か月分以上の支払を催告し、その期間内に履行がない場合は、明渡猶予は適用されない(同条2項)。また、先順位抵当権者全員の同意とその同意の登記がある賃貸借は、同意した抵当権者に対抗できる場合がある(387条)。
・D
【選択肢解説】
妥当でない。第三取得者は抵当権消滅請求をすることができる(379条)。代価弁済(378条・抵当権者の請求に応じる制度)と消滅請求(第三取得者側からの制度)は別個の制度として併存する。
・E
【選択肢解説】
妥当でない。抵当権には随伴性・付従性があり、被担保債権と分離して単独で譲渡することはできない。
関連過去問:H30,問30
問4:留置権および質権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- A:留置権者は、留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、これをまず自己の債権の利息に、次いで元本の弁済に充当することができる。
- B:留置権は、債務者が相当の担保を提供して、その消滅を請求することができる。
- C:不動産の二重売買において、第二の買主のため所有権移転登記がされた場合、第一の買主は、第二の買主からの明渡請求に対し、売主に対する損害賠償債権をもって留置権を主張することができる。
- D:動産質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。
- E:動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。
【第4問:正解と解説】
正解:C
・A
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。留置権者の果実収取権(297条)である。
・B
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。担保提供による留置権消滅請求(301条)である。
・C
【論点】留置権の牽連性(「その物に関して生じた債権」)
【考え方】
判例(最判昭43.11.21)は、二重売買の第一買主が売主に対して有する履行不能による損害賠償債権は、「その物に関して生じた債権」にあたらないとして留置権の成立を否定した。損害賠償債権は物自体から生じたものではなく、物の引渡請求権の変形にすぎないからである。
【選択肢解説】
本肢は留置権を主張できるとしており妥当でない。よって本問の正解である。牽連性が否定される代表例(他に賃借人の造作買取代金債権による建物留置の否定)として押さえる。
・D
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。動産質権は、質権設定者から質権者へ目的動産を引き渡すことによって成立する(344条)。設定者を代理占有者とする占有改定による引渡しは認められない(345条)。なお、財産権を目的とする権利質は、目的となる権利の性質に応じた方法により設定されるため、質権一般が常に物の引渡しによって成立するわけではない点に注意する。
・E
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。352条のとおり。占有の継続が対抗要件である。
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