行政書士 行政法 応用編(3〜4問)|国家賠償法・損失補償

問3:国家賠償法1条に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  • A:規制権限の不行使は、権限を定めた法令の趣旨・目的等に照らし、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、被害を受けた者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
  • B:国会議員の立法行為は、立法の内容が違憲であれば、そのことだけで直ちに国家賠償法上も違法と評価される。
  • C:裁判官がした争訟の裁判に上訴等により是正されるべき瑕疵があれば、そのことだけで国家賠償法1条1項の違法があったことになる。
  • D:検察官による公訴の提起は、無罪判決が確定した場合には、当然に国家賠償法上違法となる。
  • E:税務署長のした課税処分が取消訴訟で取り消された場合、当該処分は国家賠償法上も当然に違法と評価される。
【第3問:正解と解説】

正解:A

・A
【論点】規制権限不行使の違法(筑豊じん肺訴訟・最判平16.4.27等)

【考え方】
規制権限は国民の生命・健康等の保護のために付与されているから、その不行使が「許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠く」と認められるときは、被害者との関係で違法となる。じん肺・水俣病の各訴訟で国の責任が現に認められた。

【選択肢解説】
本肢は判例の定式のとおりであり、妥当である。

・B
【選択肢解説】
妥当でない。立法内容の違憲性と立法行為の国賠法上の違法性は区別され、例外的な場合に限り違法となる(在宅投票制事件・在外邦人選挙権訴訟)。

・C
【選択肢解説】
妥当でない。裁判官が違法・不当な目的をもって裁判をしたなど、権限の趣旨に明らかに背いて行使したと認めうる特別の事情が必要である(最判昭57.3.12)。

・D
【選択肢解説】
妥当でない。公訴提起時の各種証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば、無罪が確定しても公訴提起は違法とならない(最判昭53.10.20)。

・E
【選択肢解説】
妥当でない。職務行為基準説により、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしていれば国賠法上は違法とならない(奈良税務署推計課税事件)。

関連過去問:H29,問20


問4:国家賠償法3条以下および損失補償に関する次の記述のうち、判例・通説に照らし、妥当でないものはどれか。

  • A:公務員の選任監督者と給与等の費用負担者が異なるときは、費用負担者もまた損害賠償の責任を負い、被害者はいずれに対しても賠償を請求することができる。
  • B:国家賠償法は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り適用される。
  • C:公務員の失火による国家賠償責任については失火責任法が適用され、公務員に重大な過失があることが必要である。
  • D:損失補償は、違法な公権力の行使によって生じた財産上の損失を填補する制度である。
  • E:財産権の制限を定める法令に損失補償に関する規定がない場合であっても、直接憲法29条3項を根拠として補償を請求する余地がある。
【第4問:正解と解説】

正解:D

・A
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。国家賠償法3条1項により、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当たる者と、公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用負担者も損害賠償責任を負い、被害者はいずれに対しても賠償を請求することができる。なお、補助金を交付した者が当然に同項の「費用負担者」となるわけではない。判例上、補助金の額が法律上の費用負担者の負担額と同等又はこれに近く、実質的に事業を共同して執行していると認められる場合などに、費用負担者に含まれ得る。

・B
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。6条の相互保証主義である。

・C
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。最判昭53.7.17のとおり(国賠法4条の「民法」に失火責任法が含まれる)。

・D
【論点】国家賠償と損失補償の守備範囲

【考え方】
損失補償は「適法」な公権力の行使により生じた特別の犠牲を全体の公平負担の見地から填補する制度であり、「違法」な行為による損害を填補する国家賠償と対をなす。違法・過失=国家賠償、適法・無過失=損失補償という国家補償の二本柱の区別が出発点である。

【選択肢解説】
本肢は損失補償を「違法な」公権力の行使に対するものとしており妥当でない。よって本問の正解である。

・E
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。河川附近地制限令事件(最大判昭43.11.27)の判示である。補償規定の欠缺が直ちに違憲無効を導かない理由でもある。

関連過去問:R7,問21


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