問3:行政裁量に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当なものはどれか。
- A:マクリーン事件判決は、外国人の在留期間更新の許否の判断について、法務大臣の裁量を認めず、裁判所が全面的に審査すべきであるとした。
- B:伊方原発訴訟判決は、原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理・判断は、行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであるとし、現在の科学技術水準に照らし、調査審議で用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、または、当該原子炉施設がその審査基準に適合するとした調査審議および判断の過程に看過し難い過誤・欠落があり、行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、その判断に不合理な点があるものとして処分は違法となるとした。
- C:神戸税関事件判決は、公務員に対する懲戒処分の適否について、裁判所は懲戒権者と同一の立場に立って処分の当否を判断すべきであるとした。
- D:日光太郎杉事件判決のような判断過程審査は、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮して判断した場合であっても、結論が妥当であれば処分は適法となるとする審査手法である。
- E:個人タクシー事件判決は、多数の申請者の中から少数の者を選ぶ免許の許否について、行政庁がいかなる手続で判断しても違法の問題は生じないとした。
【第3問:正解と解説】
正解:B
・A
【選択肢解説】
妥当でない。マクリーン事件は法務大臣の広範な裁量を認め、判断が全く事実の基礎を欠くか社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかな場合に限り違法となるとした。全面審査説とは正反対である。
・B
【論点】専門技術的裁量の司法審査(伊方原発訴訟・最判平4.10.29)
【考え方】
高度の専門技術的判断を伴う原子炉設置許可について、裁判所は自ら原子炉施設の安全性を直接判断するのではなく、専門技術的な調査審議および判断を基にしてされた行政庁の判断に不合理な点があるか否かを審査する。具体的には、現在の科学技術水準に照らし、調査審議で用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、または、当該原子炉施設がその審査基準に適合するとした調査審議および判断の過程に看過し難い過誤・欠落があり、行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、その判断に不合理な点があるものとして処分が違法となる。なお、判決が「現在の科学技術水準」と述べたことから直ちに、取消訴訟における違法判断の基準時一般が処分時ではないと解することはできない。
【選択肢解説】
本肢は上記の判断枠組みを述べており、妥当である。
・C
【選択肢解説】
妥当でない。神戸税関事件は、裁判所が懲戒権者と同一の立場に立って判断し結論を導く方法(判断代置)を否定し、社会観念上著しく妥当を欠く場合に限り違法となるとした。
・D
【選択肢解説】
妥当でない。判断過程審査は、他事考慮・考慮不尽など判断の「過程」の過誤を理由に処分を違法とする手法であり、結論の妥当性で治癒されるものではない。
・E
【選択肢解説】
妥当でない。個人タクシー事件(最判昭46.10.28)は、公正な手続によって免許の許否を判定すべきであり、審査基準を設定してこれを公正に適用することを要するとして、手続的な統制を及ぼした。
関連過去問:H28,問9
問4:行政立法および行政指導に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- A:旧監獄法施行規則が被勾留者と幼年者との接見を原則として禁止していたことは、法律の委任の範囲を超え無効である。
- B:薬事法施行規則が、一般用医薬品のうち第一類医薬品および第二類医薬品について、郵便等販売(インターネット販売)を一律に禁止することとなる限度において、その規定は法律の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効である。
- C:通達は行政組織内部の命令にすぎず、国民や裁判所を法的に拘束するものではないから、裁判所は通達に示された法解釈と異なる解釈を採ることができる。
- D:行政指導が行われているとの理由だけで建築確認申請に対する応答を留保することは、建築主が行政指導に協力できない旨の意思を真摯かつ明確に表明した後であっても、適法である。
- E:地方公共団体が、指導要綱に基づく行政指導に従わないことを理由に水道の給水契約の締結を拒否することは、水道法上の「正当の理由」にあたらず許されない。
【第4問:正解と解説】
正解:D
・A
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。最判平3.7.9のとおり。委任命令の違法判例の代表例である。
・B
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。最判平25.1.11は、新施行規則のうち、一般用医薬品のうち第一類医薬品および第二類医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止することとなる限度において、新薬事法の趣旨に適合せず、その委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるとした。第三類医薬品の郵便等販売は同規則上も認められていたため、「一般用医薬品のすべてを一律に禁止した」とするのは正確でない。
・C
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。墓地埋葬通達事件の考え方であり、通達は法規たる性質を持たない。
・D
【論点】行政指導と申請への応答留保の限界(品川マンション事件・最判昭60.7.16)
【考え方】
行政指導の継続を理由として建築確認処分を留保することは、建築主が行政指導に協力できない旨の意思を真摯かつ明確に表明し、申請に対する直ちの応答を求めている場合には、建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するといえるような特段の事情がない限り、違法となる。任意の協力を前提とする行政指導の限界を画した判例である。
【選択肢解説】
本肢は、建築主が行政指導に協力できない旨を真摯かつ明確に表明した後も、行政指導が継続していることだけを理由に応答を留保することを適法としており、妥当でない。よって本問の正解である。行政手続法33条は、申請の取下げまたは内容の変更を求める行政指導について、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明した後に、行政指導を継続すること等により申請者の権利行使を妨げてはならないと定めている。同条の対象は所定の行政指導に限定されているため、品川マンション事件の判例法理全体が同条にそのまま明文化されたと表現するのは適切でない。
・E
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。最決平1.11.8のとおり。行政指導への不服従に対する給水拒否という制裁的取扱いは許されない。
関連過去問:R1,問25
