問1:国家賠償法1条に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- A:「公権力の行使」には、権力的作用のみが含まれ、公立学校における教師の教育活動は含まれない。
- B:税務署長のした課税処分が後に取消訴訟で取り消された場合、当該処分は国家賠償法上も当然に違法と評価される。
- C:国又は公共団体が賠償責任を負う場合であっても、被害者は、加害公務員個人に対して直接損害賠償を請求することはできない。
- D:国が被害者に損害を賠償した場合、加害公務員に軽過失があるにとどまるときでも、国は当該公務員に求償することができる。
- E:国会議員の立法行為は、立法の内容が違憲であれば、直ちに国家賠償法上違法と評価される。
【第1問:正解と解説】
正解:C
・A
【選択肢解説】
妥当でない。判例は、公立学校における教師の教育活動も国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」に当たり得るとしている。したがって、「公権力の行使」を権力的作用に限定し、公立学校の教育活動を一律に除外する本肢は誤りである(最判昭62.2.6)。
・B
【選択肢解説】
妥当でない。課税処分が取消訴訟で取り消されたとしても、そのことだけで当該処分が国家賠償法1条1項の適用上当然に違法となるわけではない。税務署長が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさず、漫然と課税処分をしたと認められる場合に、国家賠償法上の違法が認められる(最判平5.3.11)。取消訴訟における違法性と国家賠償法上の違法性は、別個の判断枠組みによって判断される。
・C
【論点】公務員個人の対外的責任の否定
【考え方】
判例(最判昭30.4.19)は、国家賠償法1条が適用される場合、賠償の責めに任ずるのは国又は公共団体であり、公務員個人は被害者に対して直接責任を負わないとする。公務員の職務遂行の萎縮を防ぐ趣旨と説明される。
【選択肢解説】
本肢は判例のとおりであり、妥当である。
・D
【選択肢解説】
妥当でない。求償できるのは公務員に故意又は「重大な過失」があったときに限られる(1条2項)。
・E
【選択肢解説】
妥当でない。立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障された権利を違法に侵害することが明白な場合や、国民に憲法上保障された権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、立法行為又は立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法となり得る(最大判平17.9.14)。したがって、立法内容が違憲であれば直ちに国家賠償法上違法となるとする本肢は誤りである。
関連過去問:R4,問20
問2:国家賠償法2条に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- A:営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、管理者の過失の存在を必要としない。
- B:道路の安全性確保のための防護柵設置に係る予算措置が困難であったことは、賠償責任を免れる理由とはならない。
- C:工事標識板等が他車の事故により倒されて夜間の道路上に放置されていた場合において、道路管理者が原状に復し道路を安全に保つための時間的余裕がなかったときは、道路管理の瑕疵は認められない。
- D:未改修の河川の管理についての瑕疵の有無は、財政的、技術的及び社会的諸制約の下での過渡的な安全性をもって足りるかという観点から判断される。
- E:営造物自体に物理的な欠陥がない場合には、空港の供用に伴う騒音により周辺住民に被害が生じても、設置又は管理の瑕疵が認められることはない。
【第2問:正解と解説】
正解:E
・A
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。高知落石事件が示した無過失責任の定式である。
・B
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。同事件は予算抗弁を排斥した。
・C
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。赤色灯転倒事件(最判昭50.6.26)である。87時間放置事件(瑕疵あり)と回避可能性の有無で対比する。
・D
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。大東水害訴訟の判断枠組みである。
・E
【論点】機能的瑕疵(供用関連瑕疵)
【考え方】
大阪空港訴訟(最大判昭56.12.16)は、営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連において周辺住民に被害を生じさせる場合を含めて設置管理の瑕疵を認めた。国道43号線訴訟も同様である。物理的欠陥がなくても瑕疵は成立する。
【選択肢解説】
本肢は機能的瑕疵の法理を否定しており妥当でない。よって本問の正解である。
関連過去問:R4,問21
