問3:公務員の人権に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- A:猿払事件判決は、公務員の政治的行為の禁止は、その職種・職務権限や勤務時間の内外を問わず一律に適用される限り、違憲であるとした。
- B:公務員は全体の奉仕者であるから、勤務時間外の私的な言論活動もすべて禁止される。
- C:裁判官が積極的に政治運動をすることは、裁判官の独立の観点から、懲戒の対象とすることが許されない。
- D:堀越事件判決は、国家公務員法の禁止する「政治的行為」を、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる行為に限定して解釈した。
- E:公務員の労働基本権の制限に対する代償措置は、憲法上要求されていない。
【第3問:正解と解説】
正解:D
・A
【選択肢解説】
妥当でない。猿払事件(最大判昭49.11.6)は、禁止の合憲性を認めた判決である。結論が逆。
・B
【選択肢解説】
妥当でない。公務員にも人権保障は及び、制限は必要かつ合理的な範囲に限られる。「すべて禁止」という全称は誤り。
・C
【選択肢解説】
妥当でない。寺西判事補事件(最大決平10.12.1)は、裁判官の積極的な政治運動の禁止とこれに対する懲戒を合憲とした。
・D
【論点】堀越事件(最判平24.12.7)による限定解釈
【考え方】
堀越事件は、罰則の対象となる「政治的行為」を、公務員の職務遂行の政治的中立性を損なうおそれが「実質的に」認められる行為に限定し、管理職的地位になく職務と無関係に行われた配布行為を無罪とした。猿払事件(合憲・有罪)との事案の違い(地位・職務内容・態様)を意識した判断である。
【選択肢解説】
本肢は妥当である。
・E
【選択肢解説】
妥当でない。全農林警職法事件は、人事院勧告などの代償措置の存在を争議行為の一律禁止を合憲とする重要な根拠とした。
関連過去問:H29,問3
問4:法人・団体の人権と構成員の関係に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- A:会社は、自然人と同様に国や政党の特定の政策を支持・推進し又は反対するなどの政治的行為をなす自由を有し、政治資金の寄附もその自由の一環である。
- B:税理士会が政治資金規正法上の政治団体に金員を寄付するために会員から特別会費を徴収する決議は、税理士会の目的の範囲外の行為であり無効である。
- C:司法書士会が、大震災で被災した他県の司法書士会に復興支援拠出金を寄付することは、司法書士会の目的の範囲を逸脱するものではない。
- D:強制加入団体である税理士会においては、会員に要請される協力義務にも限界があるとする必要はなく、多数決による決議があれば会員はいかなる負担にも応じなければならない。
- E:労働組合が、組合員に対して統制権を有することは認められるが、その統制権には限界がある。
【第4問:正解と解説】
正解:D
・A
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。八幡製鉄事件(最大判昭45.6.24)のとおり。
・B
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。南九州税理士会事件(最判平8.3.19)のとおり。政党等への寄付は会員の思想・信条の自由と衝突し、強制加入団体の目的の範囲外とされた。
・C
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。群馬司法書士会事件(最判平14.4.25)のとおり。公的機能の回復に資する支援は目的の範囲内とされた。
・D
【論点】強制加入団体における協力義務の限界
【考え方】
税理士会は脱退の自由がない強制加入団体であるため、会員には様々な思想・信条の者が存在することが当然に予定されており、多数決によっても会員に協力を義務づけられない事項がある(政党への寄付はその典型)。「多数決があれば何でも可」とはならない。
【選択肢解説】
本肢は協力義務に限界がないとしており妥当でない。よって本問の正解である。八幡(営利法人・広い自由)と南九州(強制加入・限界あり)の対比構造が核心。
・E
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。三井美唄労組事件のとおり(立候補断念の要求・処分は限界を超える)。
関連過去問:H16,問4
