問1:外国人の人権に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- A:国際慣習法上、外国人の入国の許否は当該国家の自由裁量に委ねられるが、いったん適法にわが国に在留する外国人には、憲法上、在留する権利および引き続き在留することを要求する権利が保障されているとするのが判例である。
- B:政治活動の自由は国民主権と密接に関わるため、その保障は外国人には一切及ばない。
- C:外国人に対する憲法の基本的人権の保障は在留制度の枠内で与えられているにすぎず、在留中の合憲な政治活動を在留期間更新の判断で消極的事情として考慮しても、その判断が裁量権の範囲を逸脱し、またはこれを濫用したものと認められない限り、直ちに違法とはならない。
- D:わが国に在留する外国人のうち永住者等の定住外国人については、地方公共団体の長・議会議員の選挙権が憲法93条2項により直接保障されているとするのが判例である。
- E:社会権はその性質上、外国人にも日本国民と同様に当然に保障される。
【第1問:正解と解説】
正解:C
・A
【選択肢解説】
妥当でない。前半は正しいが、判例(マクリーン事件)は在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利は憲法上保障されていないとした。正しい部分に誤りを接続する複合肢である。
・B
【選択肢解説】
妥当でない。判例は、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等を除き、政治活動の自由の保障は外国人にも及ぶとした。「一切及ばない」は誤り。
・C
【論点】
外国人の人権と在留期間更新における法務大臣の裁量(マクリーン事件・最大判昭53.10.4)
【考え方】
判例は、権利の性質上日本国民のみを対象とするものを除き、外国人にも基本的人権の保障が及ぶとした。政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動など、外国人の地位に照らして保障することが相当でないものを除き、その保障が及ぶ。
もっとも、外国人に対する基本的人権の保障は、外国人在留制度の枠内で与えられる。外国人には在留期間の更新を当然に要求する憲法上の権利はなく、更新の許否は法務大臣の広い裁量に委ねられる。在留中の合憲な政治活動を消極的事情として考慮した場合でも、その判断が裁量権の範囲を逸脱し、またはこれを濫用したものと認められない限り、直ちに違法とはならない。
【選択肢解説】
本肢は、外国人の人権保障が在留制度の枠内で認められることと、在留期間更新に関する法務大臣の裁量審査を正確に述べており、妥当である。
・D
【選択肢解説】
妥当でない。判例は、地方公共団体の長や議員等の選挙権についても、外国人に憲法上保障されているとはいえないとした。ただし、永住者等で、その居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められる者について、法律により地方選挙権を付与することまで、憲法が禁止しているものではないと傍論で述べている。
・E
【選択肢解説】
妥当でない。外国人の社会権について、日本国民と同様に当然にすべて保障されると一括して説明することはできず、権利の性質や個別の法律に応じて判断する必要がある。判例は、憲法25条に関する社会保障施策について、外国人を対象とするかどうかは、特別の条約等がない限り、立法府の広い裁量に委ねられるとしている。
関連過去問:H29,問3
問2:憲法の人権規定の私人間効力に関する次のア〜オの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア 三菱樹脂事件判決は、憲法19条・14条は私人相互の関係を直接規律するものではないとした。
イ 日産自動車事件判決は、男女別定年制を定める就業規則を憲法14条の直接適用により無効とした。
ウ 昭和女子大事件判決は、私立大学の学則による政治活動の制限を、その大学の校風・教育方針に照らし社会通念上不合理なものとはいえないとした。
エ 判例は、私人間の人権侵害について、民法90条等の私法の一般条項の解釈を通じて憲法の趣旨を及ぼすという立場に立つと理解されている。
オ 判例は、私人間においては憲法の人権規定はいかなる意味でも効力を持たないという立場(無効力説)を明言している。
- A:ア・イ・ウ
- B:ア・ウ・エ
- C:ア・エ・オ
- D:イ・ウ・エ
- E:ウ・エ・オ
【第2問:正解と解説】
正解:B
・A
【選択肢解説】
本肢はイを含む点で妥当でない。イ:日産自動車事件が男女別定年制を無効としたのは民法90条(公序良俗)によってであり、憲法14条の直接適用によるものではない。
・B
【論点】
私人間効力(間接適用説)と関連判例
【考え方】
ア:三菱樹脂事件(最大判昭48.12.12)の判旨のとおりであり妥当。
イ:無効の根拠は民法90条であり、直接適用としている点で妥当でない。
ウ:昭和女子大事件(最判昭49.7.19)の判旨のとおりであり妥当。
エ:判例の立場は間接適用説と理解されており妥当。
オ:判例は間接適用の枠組みで私人間にも憲法の趣旨を及ぼしており、無効力説を明言した事実はない。妥当でない。
【選択肢解説】
妥当なものはア・ウ・エであり、本肢が正解である。
・C
【選択肢解説】
本肢はオを含む点で妥当でない。オ:判例は無効力説を明言していない。間接適用説の枠組みが判例・通説の理解である。
・D
【選択肢解説】
本肢はイを含む点で妥当でない。無効の根拠条文(民法90条か憲法14条か)は私人間効力分野で最も問われるポイントである。
・E
【選択肢解説】
本肢はオを含む点で妥当でない(ウ・エは妥当)。
関連過去問:H25,問4
