行政書士 憲法 応用編(1〜2問)|精神的自由

問1:政教分離原則に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  • A:津地鎮祭事件判決は、市体育館の起工式としての地鎮祭への公金支出について、その目的が宗教的意義を持つとして違憲とした。
  • B:愛媛玉串料事件判決は、県による靖国神社への玉串料等の公金支出を、慣習化した社会的儀礼にすぎないとして合憲とした。
  • C:空知太神社事件判決は、市有地を神社施設の敷地として無償で提供していた行為について、従来の目的効果基準をそのまま適用した上で、社会的儀礼の範囲内にとどまるとして合憲とした。
  • D:愛媛玉串料事件判決は、目的効果基準を適用し、玉串料等の公金支出はその目的が宗教的意義を持つことを免れず、効果も特定の宗教への関心を呼び起こすものであるとして違憲とした。
  • E:政教分離原則は個々人の信教の自由そのものを直接保障する人権規定であり、制度的保障と解する余地はないとするのが判例である。
【第1問:正解と解説】

正解:D

・A
【選択肢解説】
妥当でない。津地鎮祭事件は、地鎮祭は慣習化した社会的儀礼であり世俗的目的によるものとして合憲とした。結論・理由とも逆である。

・B
【選択肢解説】
妥当でない。愛媛玉串料事件は「社会的儀礼にすぎないものとはいえない」として違憲とした。津地鎮祭事件の理由づけとのすり替えである。

・C
【選択肢解説】
妥当でない。空知太神社事件は、市有地を神社施設の敷地として無償で使用させていた行為について、宗教施設の性格、無償提供に至った経緯、提供の態様、一般人からの評価などを総合考慮し、社会通念に照らして許容される限度を超えるとして違憲とした。本肢は、目的効果基準を適用した上で合憲としたとしており、判断枠組みの説明および結論がいずれも妥当でない。なお、同判決が従来の最高裁判例の判断枠組みを明示的に否定したものと断定してはならない。

・D
【論点】
政教分離と目的効果基準(愛媛玉串料事件・最大判平9.4.2)

【考え方】
目的効果基準とは、行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助・助長・促進又は圧迫・干渉等になるかにより「宗教的活動」(20条3項)該当性を判断する枠組みである。同じ基準を用いながら、津地鎮祭事件は合憲、愛媛玉串料事件は違憲と結論が分かれた。

【選択肢解説】
本肢は基準・あてはめ・結論のいずれも正確であり、妥当である。

・E
【選択肢解説】
妥当でない。判例(津地鎮祭事件)は政教分離を、国家と宗教の分離を制度として保障することで間接的に信教の自由を確保する制度的保障と位置づけている。

関連過去問:H28,問6


問2:表現の自由に対する事前規制に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  • A:憲法21条2項の「検閲」とは、行政権が主体となり、思想内容等の表現物を対象として、その全部または一部の発表禁止を目的とし、対象となる一定の表現物について網羅的一般的に、発表前に内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することをいう。
  • B:検閲の禁止は絶対的なものであり、公共の福祉を理由とする例外も認められない。
  • C:税関検査は、輸入が禁止される表現物が国外で既に発表済みであることや司法審査の機会があることなどから、検閲にあたらない。
  • D:裁判所による出版物の頒布等の事前差止めは、「検閲」にはあたらない。
  • E:北方ジャーナル事件判決は、公務員・公職選挙の候補者に対する評価批判等に関する出版物の事前差止めは、いかなる場合であっても許されないとした。
【第2問:正解と解説】

正解:E

・A
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。最高裁判例によれば、検閲とは、①行政権が主体となり、②思想内容等の表現物を対象とし、③その全部または一部の発表禁止を目的として、④対象となる一定の表現物について網羅的一般的に、⑤発表前にその内容を審査した上、⑥不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものをいう。

・B
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。検閲の禁止の絶対性は判例が明言するところである。

・C
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。税関検査事件の理由づけのとおりである。

・D
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。検閲の主体は行政権に限られるため、司法機関である裁判所の差止めは検閲にあたらない(北方ジャーナル事件)。

・E
【論点】
事前抑制の原則的禁止と例外(北方ジャーナル事件・最大判昭61.6.11)

【考え方】
判例は事前差止めを原則として許されないとしつつ、①表現内容が真実でなく又は専ら公益を図る目的でないことが明白で、かつ②被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときは、例外的に許されるとした。

【選択肢解説】
本肢は「いかなる場合であっても許されない」としており、例外を認めた判例に反するため妥当でない。よって本問の正解である。絶対的禁止(検閲)と原則的禁止・例外あり(事前差止め)の強度の違いが本問の核心である。

関連過去問:H28,問41(多肢)


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