行政書士 民法 応用編(5〜6問)|担保物権

問5:先取特権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  • A:不動産の賃貸人の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた動産について存在する。
  • B:一般の先取特権は、債務者の総財産についてではなく、債務者の特定の動産についてのみ行使することができる。
  • C:先取特権は、当事者間の合意によって成立する約定担保物権である。
  • D:動産売買の先取特権に基づく物上代位は、目的動産が転売され、その代金債権が第三者に譲渡されて対抗要件が備えられた後であっても、行使することができる。
  • E:同一の目的物について一般の先取特権と特別の先取特権が競合する場合、常に一般の先取特権が優先する。
【第5問:正解と解説】

正解:A

・A
【論点】不動産賃貸の先取特権(312条・313条)

【考え方】
不動産の賃貸人は、賃料その他の賃貸借関係から生じた債権について、賃借人の動産(建物賃貸借では賃借人がその建物に備え付けた動産)の上に先取特権を有する。即時取得の規定が準用され、賃借人所有でない動産にも成立しうる(319条)。

【選択肢解説】
本肢は妥当である。

・B
【選択肢解説】
妥当でない。一般の先取特権(共益費用・雇用関係・葬式費用・日用品供給)は、債務者の「総財産」の上に成立する(306条)。

・C
【選択肢解説】
妥当でない。先取特権は法律の定める要件を満たせば当然に成立する法定担保物権である。約定担保物権は質権・抵当権。

・D
【選択肢解説】
妥当でない。判例(最判平17.2.22)は、動産売買先取特権に基づく物上代位は、転売代金債権が譲渡され第三者対抗要件が備えられた後は行使できないとする。抵当権の物上代位(債権譲渡後も可・登記による公示があるため)との結論の違いが最重要。

・E
【選択肢解説】
妥当でない。一般の先取特権と特別の先取特権が競合する場合、原則として特別の先取特権が優先する(329条2項本文。共益費用の先取特権は例外)。

関連過去問:-


問6:抵当権の侵害等に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  • A:抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けて占有する者であっても、その設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ、その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、当該占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求をすることができる。
  • B:抵当権に基づく妨害排除請求権の行使にあたり、一定の場合には、抵当権者は、占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる。
  • C:抵当山林の立木が不法に伐採されて搬出されようとしている場合、抵当権者は、搬出の禁止を求めることができる。
  • D:第三者が抵当不動産を損傷させ、その交換価値が減少して被担保債権の担保に不足が生じ、かつ、被担保債権の弁済期が到来した場合であっても、抵当権者は、抵当権を実行するまでは、当該第三者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求することができない。
  • E:抵当権設定者が通常の利用の範囲を超えて抵当不動産の担保価値を減少させる行為をする場合、抵当権者はその禁止を求めることができる。
【第6問:正解と解説】

正解:D

・A
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。最大判平11.11.24・最判平17.3.10が認めた抵当権に基づく妨害排除請求である。

・B
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。最判平17.3.10は、抵当不動産の所有者に適切な維持管理を期待できない場合、抵当権者への直接の明渡しを認めた。

・C
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。抵当土地上の立木が不法に伐採され、搬出されようとしている場合、抵当不動産の交換価値が侵害されるため、抵当権者は抵当権に基づく妨害予防・妨害排除請求として、その伐採又は搬出の禁止を求めることができる。これは、伐採された立木を「従物化した動産」として説明するものではなく、抵当権が把握する交換価値への侵害を防止・除去する制度である。

・D
【論点】抵当権侵害による損害賠償請求の時期

【考え方】
第三者による抵当不動産の損傷によって交換価値が減少し、残存する担保価値が被担保債権額を下回る場合には、抵当権侵害による損害が認められ得る。判例上、被担保債権の弁済期が到来した後であれば、抵当権を実行する前でも損害賠償を請求することができる。

【選択肢解説】
本肢は、被担保債権の弁済期が到来した後も抵当権を実行するまでは損害賠償を請求できないとしており、妥当でない。よって本問の正解である。【試験対策】妨害排除・妨害予防は被担保債権の弁済期前でも認められ得るが、抵当権侵害による損害賠償請求については、被担保債権の弁済期到来の有無を区別する。

・E
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。担保価値維持請求権として認められる(判例)。

関連過去問:H29,問31


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