問5:事務管理および不当利得に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- A:義務なく他人のために事務の管理を始めた者は、本人に対し、支出した有益な費用の償還と、事務処理に対する相当額の報酬を請求することができる。
- B:事務管理者が本人の名で第三者と契約を締結した場合、その契約の効果は当然に本人に帰属する。
- C:債務者が、債務の不存在を知りながら弁済として給付をしたときは、その給付したものの返還を請求することができない。
- D:期限前の債務の弁済として給付をした者は、錯誤によって給付をした場合であっても、債権者に対し、一切の返還・償還を請求することができない。
- E:不法原因給付をした者は、不当利得に基づく返還請求はできないが、給付した物の所有権に基づく返還請求をすることはできる。
【第5問:正解と解説】
正解:C
・A
【選択肢解説】
妥当でない。管理者は有益な費用の償還は請求できるが(702条1項)、報酬を請求することはできない。好意による相互扶助という事務管理の性質からの帰結である。
・B
【選択肢解説】
妥当でない。事務管理は管理者に代理権を付与するものではないため、本人の名でした契約の効果は当然には本人に帰属しない(最判昭36.11.30)。
・C
【論点】非債弁済(705条)
【考え方】
債務の不存在を「知りながら」任意に弁済した者は、自らの行為と矛盾する返還請求をすることが許されない(禁反言)。返還請求が封じられるのは悪意の弁済者であり、債務の不存在を過失により知らなかった者には適用されない。
【選択肢解説】
本肢は705条のとおりであり、妥当である。
・D
【選択肢解説】
妥当でない。期限前弁済は原則として返還請求できないが、錯誤によって給付したときは、債権者が得た利益(中間利息等)の償還を請求できる(706条ただし書)。「一切」が誤り。
・E
【選択肢解説】
妥当でない。判例(最大判昭45.10.21)は所有権に基づく返還請求も否定する。708条の趣旨の潜脱を許さないためである。
関連過去問:R7,問34
問6:不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- A:責任能力のある未成年者が不法行為をした場合であっても、監督義務者の義務違反と損害との間に相当因果関係が認められるときは、監督義務者について民法709条に基づく不法行為が成立し得る。
- B:他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。
- C:被害者が即死した場合であっても、被害者本人に損害賠償請求権が発生し、相続人がこれを相続する。
- D:名誉を毀損された者は、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分(謝罪広告等)を裁判所に請求することができる。
- E:認知症により責任を弁識する能力を欠く者の同居の配偶者は、そのことだけで当然に民法714条の法定の監督義務者に該当する。
【第6問:正解と解説】
正解:E
・A
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。最判昭49.3.22のとおり。責任能力ある未成年者の場合は714条によれないが、監督義務違反と損害との相当因果関係があれば監督者自身の709条責任が成立しうる。
・B
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。正当防衛(720条1項)である。緊急避難(同2項・物から生じた危難)との区別も重要。
・C
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。生命侵害については、被害者本人に生じた財産上・非財産上の損害賠償請求権を相続人が承継する相続構成が判例・実務上採用されている。最高裁大法廷は、慰謝料請求権についても、非財産権の侵害と同時に発生する金銭債権であり、被害者が請求意思を表明したか否かにかかわらず相続の対象になるとした(最大判昭42.11.1)。
・D
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。723条(名誉回復処分)のとおり。最大判昭31.7.4は、謝罪広告の内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度のものである場合には、その掲載を命ずる判決は憲法19条に反しないとした。
・E
【論点】JR東海事件(最判平28.3.1)
【考え方】
判例は、精神障害者と同居する配偶者であるからといって、そのことだけで当然に法定の監督義務者に該当するとはいえないとした。監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情がある場合に「準ずべき者」として責任を問い得るにとどまり、当該事案では同居の妻・別居の長男とも責任が否定された。
【選択肢解説】
本肢は当然に該当するとしており妥当でない。よって本問の正解である。
関連過去問:R4,問34/H30,問35
