問1:AはBに対する貸金債権を担保するため、B所有の甲土地に抵当権の設定を受け、その登記を経た。次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- A:抵当権設定当時、甲土地が更地であった場合において、その後Bが甲土地上に乙建物を建築し、抵当権が実行されて甲土地と乙建物の所有者が異なるに至ったときは、乙建物のために法定地上権が成立する。
- B:抵当権設定当時、甲土地上にB所有の乙建物が存在した場合において、抵当権実行により甲土地をCが買い受けたときは、乙建物のために法定地上権が成立する。
- C:Bが甲土地をDに賃貸し、Dが賃借権の対抗要件を備えていた場合、その賃貸借が抵当権設定登記の後にされたものであっても、DはAに賃借権を対抗できる。
- D:Aは、Bの債務不履行の前であっても、甲土地の果実に対して抵当権の効力を主張することができる。
- E:抵当権の被担保債権の利息は、後順位抵当権者がいる場合でも、満期となった最後の5年分について優先弁済を受けることができる。
【第1問:正解と解説】
正解:B
・A
【選択肢解説】
妥当でない。更地に抵当権が設定された場合、抵当権者は更地としての担保価値を把握しているため、後に築造された建物のために法定地上権は成立しない。この場合は一括競売(389条)による。
・B
【論点】法定地上権の成立要件(388条)
【考え方】
①抵当権設定当時に建物が存在し、②土地と建物が同一所有者に属し、③競売により所有者を異にするに至った場合、建物のために法定地上権が成立する。自己の土地に自己借地権を設定できない以上、法が地上権を発生させて建物収去の社会的損失を防ぐ趣旨である。
【選択肢解説】
本肢は要件をすべて満たしており、妥当である。
・C
【選択肢解説】
妥当でない。抵当権設定登記後に設定され、対抗要件を備えた賃借権であっても、そのことだけで先順位抵当権者や競売の買受人に対抗できるわけではない。ただし、登記をした賃貸借について、先順位抵当権者全員の同意とその同意の登記がある場合は、同意した抵当権者に対抗できる(387条)。また、抵当権者に対抗できない建物賃借人で、競売手続の開始前から建物を使用又は収益している者等には、原則として買受けの時から6か月間の明渡猶予が認められる(395条)。もっとも、買受人が相当の期間を定めて買受け後の使用対価の1か月分以上の支払を催告し、その期間内に履行がない場合は、明渡猶予は適用されない。
・D
【選択肢解説】
妥当でない。抵当権の効力が果実に及ぶのは被担保債権の不履行後である(371条)。
・E
【選択肢解説】
妥当でない。利息等の優先弁済は満期となった最後の「2年分」に限られる(375条)。数字のすり替え。
関連過去問:H30,問30
問2:非典型担保および根抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- A:譲渡担保権者は、目的物の評価額が被担保債権額を上回る場合、その差額を清算金として設定者に支払う義務を負う。
- B:不動産を目的とする譲渡担保では、処分清算型の場合は債権者が目的物を第三者に処分するまで、帰属清算型の場合は清算金の支払若しくは提供又は清算金がない旨の通知がされるまで、設定者は原則として債務全額を弁済して目的物を受け戻すことができる。
- C:構成部分の変動する集合動産であっても、種類・所在場所・量的範囲の指定などにより目的物の範囲が特定されるときは、一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができる。
- D:元本確定前の根抵当権については、被担保債権の範囲に属する個別債権が譲渡されると、根抵当権もこれに随伴して移転する。
- E:根抵当権の極度額を変更するには、利害関係人の承諾を得なければならない。
【第2問:正解と解説】
正解:D
・A
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。譲渡担保権者の清算義務は判例の確立した法理である。
・B
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。処分清算型では、譲渡担保権者が目的物を第三者に処分するまで、設定者は債務全額を弁済して目的物を受け戻すことができる。第三者への処分により、設定者は原則として受戻権を失い、清算金がある場合に譲渡担保権者へその支払を請求できるにとどまる。帰属清算型では、目的物の適正評価額が被担保債権額を上回る場合は清算金の支払又は提供まで、上回らない場合は清算金がない旨の通知まで、設定者は受戻権を行使できる。【試験対策】帰属清算型と処分清算型で、受戻権が消滅する時期を区別する。
・C
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。集合動産譲渡担保の有効要件に関する判例の内容である。
・D
【論点】確定前の根抵当権の随伴性の否定
【考え方】
根抵当権は一定の範囲に属する不特定の債権を担保するものであり、元本確定前は特定の債権との結びつきがない。したがって個別債権が譲渡されても根抵当権は移転しない(398条の7第1項)。
【選択肢解説】
本肢は随伴性を肯定しており妥当でない。よって本問の正解である。普通抵当権(随伴性あり)との最重要の違いである。
・E
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。極度額は後順位者等の利害に直結するため、その変更には利害関係人の承諾が必要である(398条の5)。被担保債権の範囲・債務者の変更(後順位者等の承諾不要)との対比。
関連過去問:H28,問31
