行政書士 憲法 応用編(3〜4問)|包括的人権・平等・社会権

問3:社会権および選挙権に関する次のア〜オの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア 朝日訴訟判決は、健康で文化的な最低限度の生活の認定判断は、厚生大臣の合目的的な裁量に委ねられているとした。
イ 堀木訴訟判決は、障害福祉年金と児童扶養手当の併給禁止規定を、生存権を侵害するものとして違憲とした。
ウ 堀木訴訟判決は、憲法25条の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量に委ねられているとした。
エ 在外日本人選挙権訴訟判決は、国民の選挙権又はその行使を制限するにはやむを得ない事由がなければならないとし、在外国民の選挙権行使を制限していた公職選挙法の規定を違憲とした。
オ 在外日本人選挙権訴訟判決は、違憲の判断はしたものの、立法不作為を理由とする国家賠償請求については棄却した。

  • A:ア・イ・ウ
  • B:ア・ウ・エ
  • C:ア・エ・オ
  • D:イ・ウ・オ
  • E:ウ・エ・オ
【第3問:正解と解説】

正解:B

・A
【選択肢解説】
本肢はイを含む点で妥当でない。堀木訴訟判決は、障害福祉年金と児童扶養手当の併給禁止について、立法府に認められる広い裁量の範囲を逸脱したものではないとして合憲とした。

なお、最三小判令和7年6月27日は、生活扶助基準の改定について厚生労働大臣の判断に裁量権の逸脱・濫用があるとして、生活保護法3条および8条2項に違反する違法な改定であると判断したが、憲法25条違反を認めたものではない。

・B
【論点】
生存権に関する立法・行政裁量と選挙権の厳格な保障

【考え方】
ア:朝日訴訟判決は、原告の死亡により訴訟が終了したとした上で、傍論として、健康で文化的な最低限度の生活の具体的認定は厚生大臣の合目的的な裁量に委ねられていると述べており、妥当である。

イ:堀木訴訟判決は、障害福祉年金と児童扶養手当の併給禁止を合憲としており、妥当でない。

ウ:堀木訴訟判決は、憲法25条の趣旨を実現するために具体的にどのような立法措置を講ずるかは、立法府の広い裁量に委ねられるとし、妥当である。ただし、広い裁量が認められることは司法審査が排除されることを意味せず、裁量権の逸脱・濫用の有無は司法審査の対象となる。

エ:在外日本人選挙権訴訟判決は、国民の選挙権またはその行使を制限するためには、やむを得ない事由が必要であるとし、在外国民の選挙権行使を制限した公職選挙法の規定を違憲としたため、妥当である。

オ:同判決は、立法不作為を理由とする国家賠償請求も認容しており、妥当でない。

なお、最三小判令和7年6月27日は、生活扶助基準の改定について厚生労働大臣の判断過程を審査し、裁量権の逸脱・濫用があるとして、生活保護法3条および8条2項に違反する違法な改定であるとした。ただし、憲法25条違反を認めた判決ではない。

【選択肢解説】
妥当なものはア・ウ・エであり、本肢が正解である。生存権分野では立法府・行政府に広い裁量が認められるが、司法審査が排除されるわけではない。これに対し、選挙権の制限にはやむを得ない事由が必要とされる。

・C
【選択肢解説】
本肢はオを含む点で妥当でない。オ:国家賠償請求も認容された点にこそ本判決の画期性がある。

・D
【選択肢解説】
本肢はイ・オを含む点で妥当でない。

・E
【選択肢解説】
本肢はオを含む点で妥当でない(ウ・エは妥当)。

関連過去問:H30,問5


問4:議員定数不均衡に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  • A:投票価値の平等は、憲法上の要請ではなく、立法政策の問題にすぎない。
  • B:定数不均衡が違憲状態にあると判断された場合、合理的期間の経過を待つことなく、直ちに定数配分規定は違憲となる。
  • C:最高裁判所は、衆議院議員選挙について、定数配分規定を違憲としながら、事情判決の法理により選挙自体は無効としない判断をしたことがある。
  • D:参議院議員選挙については、参議院の特殊性を理由に、投票価値の平等は一切問題とならない。
  • E:定数配分規定が憲法に違反する場合、最高裁判所は事情判決の法理を用いることなく、必ず当該選挙を無効としなければならないとしている。
【第4問:正解と解説】

正解:C

・A
【選択肢解説】
妥当でない。投票価値の平等は憲法14条1項等の要求するところであるとするのが確立した判例である。

・B
【選択肢解説】
妥当でない。判例は「違憲状態→合理的期間内に是正されない場合に初めて違憲」という二段階の枠組みを採る。

・C
【論点】
議員定数不均衡違憲判決と事情判決の法理(最大判昭51.4.14・最大判昭60.7.17)

【考え方】
最高裁判所は、衆議院議員選挙における最大較差が1対4.99に達していた事案について、定数配分規定が憲法の投票価値の平等の要求に違反すると判断した。

もっとも、選挙を無効とすることによって生ずる重大な混乱を避けるため、行政事件訴訟法31条に示された事情判決の法理の基礎にある一般的な法の基本原則を適用し、選挙自体は無効としなかった。

【選択肢解説】
本肢は、最高裁判所が定数配分規定を違憲としながら、事情判決の法理により選挙自体を無効としなかったことがあると述べており、妥当である。

・D
【選択肢解説】
妥当でない。参議院についても投票価値の平等は問題となり、違憲状態とした判例が複数ある(半数改選等の特殊性を考慮しつつも無限定ではない)。

・E
【選択肢解説】
妥当でない。最高裁判所は、定数配分規定を違憲と判断した場合であっても、選挙を無効とすることで生ずる重大な混乱等を考慮し、事情判決の法理により選挙自体を無効としなかったことがある。違憲判断がされた場合に、必ず選挙を無効としなければならないわけではない。

関連過去問:H26,問5


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