問3:不法行為による損害賠償に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- A:不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、人の生命又は身体を害する不法行為の場合、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年である。
- B:被害者に対する加害行為と被害者の罹患していた疾患がともに原因となって損害が発生した場合、裁判所は、損害賠償の額を定めるにあたり、その疾患を斟酌することができる。
- C:不法行為による損害賠償債務は、債権者からの履行の請求を受けた時から遅滞に陥る。
- D:幼児が死亡した場合の逸失利益の算定にあたっては、将来の養育費を要しなくなったことを利益として損害額から控除しなければならない。
- E:数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えた場合、各自は損害の公平な分担の見地から、自己の寄与度の割合においてのみ賠償責任を負う。
【第3問:正解と解説】
正解:B
・A
【選択肢解説】
妥当でない。人の生命又は身体を害する不法行為の主観的期間は「5年」である(724条の2)。3年は一般の不法行為の期間。
・B
【論点】素因減額(最判平4.6.25)
【考え方】
被害者の疾患が損害の発生・拡大に寄与した場合、判例は722条2項(過失相殺)の類推適用により、公平の見地から疾患を斟酌して賠償額を減額することを認める。ただし疾患にあたらない被害者の身体的特徴(首が長い等)は、特段の事情がない限り斟酌できない(最判平8.10.29)。
【選択肢解説】
本肢は判例のとおりであり、妥当である。
・C
【選択肢解説】
妥当でない。不法行為による損害賠償債務は、催告を要することなく、損害の発生(不法行為)の時から当然に遅滞に陥る(判例)。被害者保護の趣旨である。
・D
【選択肢解説】
妥当でない。判例(最判昭53.10.20)は、幼児死亡の場合の将来の養育費を逸失利益から控除することを否定する。損益相殺が否定される代表例。
・E
【選択肢解説】
妥当でない。共同不法行為者は連帯して損害の「全額」について賠償責任を負う(719条1項)。寄与度は求償の内部関係で考慮されるにとどまる。
関連過去問:R5,問34
問4:特殊の不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- A:使用者責任が成立する場合であっても、被用者自身も被害者に対して不法行為責任を負い、両者の債務は連帯債務(不真正連帯債務)の関係に立つ。
- B:使用者責任における使用関係は、雇用契約がある場合に限られず、実質的な指揮監督関係があれば認められる。
- C:注文者は、注文又は指図についてその注文者に過失があったときを除き、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。
- D:動物の占有者は、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときであっても、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を免れない。
- E:土地の工作物の設置又は保存の瑕疵によって他人に損害が生じた場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、賠償をした占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
【第4問:正解と解説】
正解:D
・A
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。使用者責任と被用者個人の709条責任は併存し、被害者はいずれにも全額請求できる。
・B
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。判例は暴力団の組長と下部組織構成員の間にも実質的指揮監督関係を認めた例があるなど、使用関係は広く解される。
・C
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。716条のとおり。請負人は独立の事業者であり、注文者は原則として責任を負わない。
・D
【論点】動物占有者の責任(718条)は中間責任
【考え方】
動物の占有者は、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもって管理をしたことを立証すれば、責任を免れる(718条1項ただし書)。無過失責任ではなく、立証責任が転換された中間責任である。
【選択肢解説】
本肢は相当の注意を尽くしても免責されないとしており妥当でない。よって本問の正解である。「714条・715条・717条(占有者)・718条=中間責任/717条(所有者)=無過失責任」の整理が有効。
・E
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。717条3項の求償である。
関連過去問:-
