問5:地方公共団体の事務および条例制定権に関する次の記述のうち、地方自治法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- A:法定受託事務は国の事務であるから、地方公共団体の議会は、法定受託事務について条例を制定することができない。
- B:国政選挙や旅券の交付に関する事務は、自治事務の典型例である。
- C:普通地方公共団体は、義務を課し又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。
- D:条例で罰則を定めるには、個別の法律による具体的な委任が条例ごとに必要であるとするのが判例である。
- E:国の法令と同一の目的で、法令より厳しい規制基準を定める条例は、いかなる場合も法令に違反し無効である。
【第5問:正解と解説】
正解:C
・A
【選択肢解説】
妥当でない。法定受託事務も地方公共団体の事務であり(2条9項)、法令に違反しない限り条例を制定できる(14条1項は自治事務に限定していない)。
・B
【選択肢解説】
妥当でない。国政選挙・旅券交付は国が本来果たすべき役割に係る第1号法定受託事務の典型例である。自治事務の典型は都市計画決定や飲食店営業許可など。
・C
【論点】義務賦課・権利制限の条例主義(14条2項)
【考え方】
住民の権利義務に関わる規律は、住民の代表機関である議会の議決を経た条例によらなければならない。長の規則では義務を課し権利を制限することは原則できない、という規範の階層を定めた規定である。
【選択肢解説】
本肢は14条2項のとおりであり、妥当である。
・D
【選択肢解説】
妥当でない。判例(大阪市売春取締条例事件)は、法律の授権が相当な程度に具体的であり限定されていれば足りるとし、地方自治法14条3項がその授権にあたると解されている。条例ごとの個別委任は不要。
・E
【選択肢解説】
妥当でない。徳島市公安条例事件によれば、法令が全国一律の規制を施す趣旨ではなく、地方の実情に応じた別段の規制を容認する趣旨と解されるときは、いわゆる上乗せ条例も適法となりうる。「いかなる場合も」が誤り。
関連過去問:R3,問23/R7,問22
問6:住民監査請求および住民訴訟に関する次の記述のうち、地方自治法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- A:住民監査請求は、当該地方公共団体の住民であれば、1人でも行うことができ、法人も行うことができる。
- B:住民訴訟の対象は、住民監査請求の対象と異なり、財務会計上の行為に限られず、当該地方公共団体の事務全般に及ぶ。
- C:怠る事実に係る住民監査請求については、原則として、行為のあった日または終わった日から1年という期間制限は適用されないが、判例上、特定の財務会計上の行為の違法性を判断しなければならない関係にある場合などには、期間制限が及ぶことがある。
- D:住民訴訟において住民が勝訴(4号請求の認容)した場合、長は、判決に従い、当該職員等に対して損害賠償金の支払を請求しなければならない。
- E:住民監査請求の対象は、違法な行為に限られず、不当な財務会計上の行為にも及ぶ。
【第6問:正解と解説】
正解:B
・A
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。住民監査請求に署名数の要件はなく、選挙権も不要で、法人も可能である。
・B
【論点】住民訴訟の対象の限定
【考え方】
住民訴訟は住民監査請求を経た財務会計上の行為又は怠る事実についてのみ提起できる(242条の2第1項)。事務全般に及ぶのは直接請求としての事務監査請求(監査の対象として)であり、それは訴訟には接続しない。「監査請求前置+財務会計限定」が住民訴訟の二大特徴である。
【選択肢解説】
本肢は事務全般に及ぶとしており妥当でない。よって本問の正解である。なお住民訴訟で違法性が問えるのは財務会計行為自体の違法であり、先行する非財務的行為の違法は原則として財務会計行為の違法事由を構成する限度で問題となる。
・C
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。怠る事実を対象とする住民監査請求については、原則として地方自治法242条2項の1年の期間制限は適用されない。
ただし、判例上、怠る事実の監査を遂げるために、特定の財務会計上の行為が財務会計法規に違反して違法であるかを判断しなければならない関係にある場合には、当該行為のあった日または終わった日を基準として期間制限が及ぶ。また、第一の怠る事実が違法であることに基づいて発生した請求権の不行使を第二の怠る事実とする場合には、第一の怠る事実が終わった日を基準として期間制限が及ぶことがある。
本肢は、怠る事実について期間制限が適用されないという原則と、判例上の例外を併せて述べており、妥当である。
・D
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。242条の3第1項のとおり。支払われない場合、地方公共団体は当該請求に係る訴訟を提起しなければならない(二段階構造)。
・E
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。「違法若しくは不当な」財務会計上の行為が対象である(242条1項)。
関連過去問:R4,問23/R6,問23
